杉田水脈衆議院議員の一連の言動に対する抗議声明

 私たちレインボー千葉の会は,政策提言団体として当事者や支援者の声を集め,これま で学習会やシンポジウムを開いて理解を広め,また行政との懇談会を設けるなどして実際 の施策につなげるといった活動をしてきました。同様の目的を持った他団体による活動や メディアによる報道もあり,LGBTに対する認知度は確実に広がりを見せています。

 このような時勢の中で,杉田水脈衆議院議員(以下,杉田議員)は新潮45(2018年8月 号)において「『LGBT』支援の度が過ぎる」とする論文を掲載しました。この論文で は,「LGBTに生産性がない」とした上で,「税金を投入することが果たしていいのかどう か」と疑問を投げかけています。また,「性的指向」を「性的嗜好」と表現し,LGBTへの 差別が実際にあるのかと問うたり,同性愛者は不幸な人生を歩むのだと断定したりと,数 多くの事実誤認や誤解に基づいて構成された文章です。
 個々の論点に対する議論は,LGBT法連合会やLGBT支援法律家ネットワークなどのLGBT支 援団体だけでなく,識者による議論によっても指摘されていますので,ここでは割愛しま す。

 しかし,これだけ問題視されながらも杉田議員の所属する自由民主党は当初,黙認とす らとれる姿勢を打ち出し,世間の熱が冷めないと見るや,指導をしたとして幕引きを図る 姿勢を見せています。安倍総理大臣は記者団からの質問に,「人権が尊重され、多様性が 尊重される社会を目指すのは当然だ」として,党の見解を述べていますが,それに見合う だけのリーダーシップを発揮しているとは思えません。
 今回の杉田議員,それに付随する形で発言された同程度の知識と理解に基づく他の議員 の発言は,当事者とその家族を始めとする関係をもつ人々の気持ちを踏みにじり侮辱し, 大きな悲しみと苦しみ,そして言い表しようのないむなしさを呼び起こした許せないもの です。公人としての発言の影響力の大きさへの認識不足,それにともなう責任の重大さに 対する責任感の欠落は甚だしいものがあります。

 指導を受けたとされる杉田議員からは,謝罪も撤回もなされないまま,さらに追い打ち をかけるように,新潮45(2018年10月号)は「そんなにおかしいか『杉田水脈』」と題 した杉田議員擁護と受け止められる特集を組み,さらに誤解と偏見を広め,当事者やその 家族など関係者たちに,さらなる苦しみを与える事態に至りました。
  私たちレインボー千葉の会としても,このような事態を黙認することはできません。
 杉田議員が,正しい知識と当事者の置かれている状況への正しい理解,そして誠意を もって謝罪と撤回に臨むことを望みます。

 差別や偏見は当事者を傷つけるだけでなく,当事者と社会との距離を広げてしまうもの です。差別や偏見は,当事者のありのままの姿を知らないこと,また正しい知識を得てい ないこと,または誤解に基づくものが大半です。これらは不安や憶測を呼び,当事者との 距離をさらに広げてしまいます。
 このような悪循環を断ち切るために現在,多くの企業がLGBTに代表される性的指 向・性自認に対する啓発活動を実施し,また実施することを検討しています。また,パートナーシップ制度や差別禁止,理解促進を目指した条例を検討し,実際に制定に至った自 治体も増えてきています。このような動きは当事者やその家族などの関係者を勇気づけ, 励まし,明日を生きる希望を与えてくれる,とても前向きな変化です。

 私たちレインボー千葉の会も,今回の杉田議員の論文に端を発する一連の出来事を踏ま え,今後も正しい知識と情報を広め啓発し,社会への働きかけを強め,どのような性的指 向・性自認をもった人であっても,より生きやすい社会を目指していく活動を,千葉から 全国に向けて,より活発に積極的に継続していくことを,ここに表明します。